雪には、小さい頃から憧れや夢といったロマンティックな思いがあります。雪の朝、寝床で感じる独特の優しい匂い、雨戸を開けると障子の色も柔らかく光沢を帯びて見えました。
そして何もかも白く包んでくれる魔法のような力、私は雪が大好きです。小学生の低学年の頃、こんもりした雪のかたまりを長靴で払ったら、山吹の黄色い花が飛び出してきました。白銀に足跡をつけてみたり、雪を被った竹を揺らして遊んだ思い出、雪との語らいに終わりはありません。
雪やこんこ あられやこんこ
降っては降っては ずんずん積もる
山も野原も 綿帽子かぶり
枯木残らず 花が咲く
童謡がふと口をついて出てきます。パソコンもスマートフォンも無い時代、もっと時間がゆっくり流れていたように思います。全てがシンプルだけれど温かだったように思うのは、私だけでしょうか。
携帯が普及し初めの頃、お抹茶の先生が「やっぱり、携帯を扱えるようにならなきゃ駄目なのかしら。」と困惑顔でおっしゃいました。先生は当時70代でいらしたと思います。「別に必要じゃ無いと思います。」と私はお答えしましたが、今でしたらどう答えているのでしょう。年代を問わずスマートフォンもパソコンも必要な時代です。雪と戯れる時間も、あの匂いを懐かしむ時間も少なくなりました。それでも昨年は雪を被った公園の写真を撮りました。
雪国の人にとっては手放しで喜べないのかも知れません。でも私は、数少ない雪の思い出に昔を重ねて見てしまいます。
ジャズ風にアレンジした「雪」をピアニストMAIさんの演奏でお楽しみ下さいませ。
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