部分稽古とは文字通り、重点的に稽古をする必要のある部分を抜き出して行う稽古の事です。
お抹茶のお稽古は通常この部分稽古から始まります。
お抹茶の先生から最初に指導を受けたのは、帛紗(ふくさ)の扱い方でした。帛紗は棗(なつめ)や茶杓(ちゃしゃく)と言ったお道具を拭くものです。帛紗は絹で出来ていて、通常お点前をする時は帯に挟んでいます。お客になった場合は着物の懐(ふところ)に入れています。先生が用意して下さったのはオレンジ色に柄のついた帛紗でした。それと共に古帛紗を頂きました。古帛紗も抹茶碗を乗せたり、茶杓を拭いたり、乗せたりと様々に使います。私が頂いた古帛紗は柴山緞子(しばやまどんす)と言い、通常名物裂(めいぶつぎれ)でできています。お稽古の時は帛紗ばさみの中には、帛紗、古帛紗、懐子(かいし)を入れています。懐子の束には硫酸紙と黒文字(和菓子を切るもの)を挟んでおきます。
お稽古は帛紗のたたみ方を覚える事から始めます。次に棗(なつめ・薄茶の入った小さな茶入れ)の拭き方を習います。続いて茶杓の拭き方を習います。抹茶碗の中には茶巾(ちゃきん)を仕込んでおきますが、その茶巾のたたみ方を覚えます。この様にお道具の扱い一つ一つを取り出して習う事を部分稽古と言います。
そしてそれが全てできる様になると「盆点て」と言う基本となるお抹茶の点て方を習います。
煎茶道においても特殊なお道具があります。例えば煎茶では茶巾だけではなく茶托やお盆を拭く時に盆巾(ぼんきん)と呼ばれる布を使います。茶巾も盆巾もたたみ方が決まっていて部分稽古で習得します。
部分稽古はお茶の世界だけではありません。
ピアノを始めれば、曲を最初から最後までただ弾くだけでは上手くなりません。曲が難しくなればなるほど、必ず途中で引っ掛かる箇所が出てきます。そんな時はそこだけを集中的に練習します。そうすると曲全体を弾いた時に滑らかに曲想を表現する事が出来るのです。
実は私は5年程前からピアノを始めました。始めた理由はピアノを弾く事で脳を刺激し、物忘れの予防になると聞いたからです。小学生の頃ピアノを始めましたが、楽譜を読むのが苦手で挫折しました。今更とも思いましたが、良いと思う事には挑戦しようと意を決して始めました。楽譜は『ハノン』と『大人のためのクラシック』を使いました。しかし、3年ほど致しましたら、ちっとも面白くなくなりました。嫌になったのです。
ピアノが物忘れの予防になると言うのは本当です。練習前は「ええっ?」と聞き返す事が多かったのですが、それがすっかり無くなっていました。ですから、嫌いなどとは言ってられない理由がありました。好きなジャズだったらと考え、今は『ジャズ ベストヒット』と言うあまり難しくない楽譜に取り組んでいます。もちろん、なかなか上手くならずに部分稽古をしていますが、楽しく続けられています。
部分稽古は大切です。何でもそうだと思いますが、これは苦手と思う事は、そこだけを抜き出して最初はゆっくりそして何度もさらっていくうちに、いつの間にかそれだけではなく全体がスムーズに出来るようになります。
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