私はお抹茶のお稽古で、抹茶茶碗や菓子鉢をはじめ多くの焼き物を見たり触ったりする機会に恵まれていました。また、仕事でも焼き物を扱っておりました。
いわゆる焼き物には陶器と磁器があります。陶器と磁器には材質はもちろんの事、作り方も焼く温度も違い、上質に焼かれた陶器と磁器の選び方もそれぞれ違います。
陶器は一般的に色彩が地味で、土色や黒っぽい色をしています。
それがかえってお料理を目立たせてくれます。一時期、その陶器が大ブームになったため、磁器を扱う窯元では半磁器と言って土の持ち味を出せる磁器作りが盛んになりました。
ご飯茶碗も炊き込みご飯のように個性のあるご飯は、陶器の器が似合ったりします。また、コーヒーは個性あふれた陶器で飲む方が、美味しく感じたりします。黒っぽい焼き締めの大皿などは、葉蘭など緑の葉物を敷き、新鮮なお刺身を何種類か盛りつけ、白髪大根、しそ、大葉、菊や紅たでのツマと共に南天なども飾ると祝い事などの晴れの雰囲気が出ます。唐津(佐賀県の陶器)などの渋い器も盛り鉢や菓子鉢、煮物用にと大きさに合わせて使い勝手を考えるのも面白い事です。
陶器には底の方まで釉薬(ゆうやく:焼き物を焼く際、生地の表面にかける薬品で、これによって耐水性が出来る)をかけていないものもあります。陶器の好きな人から見れば、土味が楽しめると言って面白い部分なのです。しかし家庭で毎日使うとなれば、洗った後でよく乾かさないと、釉薬のかかっていない底の部分にカビが生えやすいと言う難点があります。陶器を焼く窯元の中には、底まで釉薬をかけてその難点をカバーした窯元もあります。また、陶器は元々土(粘土)ですから磁器に比べると欠けやすいのが難点です。ただし最近は、陶器にも食洗機対応という表示のある食器も出てきているようです。
一方、磁器は白を基調としていて清潔で見た目の端正さに魅力があります。
陶器に比べると生地自体の面白さには欠けますが、私は毎日使う家庭の器としては、総じて磁器の方が合うように思います。洗えば汚れも簡単に落ちますし、カビに悩む事もありません。じっくりと時間をかけて焼かれた磁器は、生地が締まり、ちょっと落としたくらいでは割れません。又、心を込めて手描きされた染付け(白に藍色の模様)は、器に品格があります。上絵(白磁に様々な色彩で絵を描き再び焼く)を描いた器は可愛かったり、美しかったりします。ただし安価な磁器も出回っており、そうした磁器は往々にして短時間で焼成される為、割れやすい所に難点があります。これは中が生焼けだからです。
磁器を選ぶなら、何のお料理でも抵抗のない絵柄の無い白磁も良いのですが、染付けや少なめに絵柄が描かれた上絵の器も良いと思います。絵柄が器の底にあったりすると、お料理を頂いた後に可愛い絵柄が出てきたりして楽しいものです。
ざっと陶器と磁器の違いに触れてみました。
ご自宅で使われる食器はこのような違いを踏まえた上で、用途やお好みに応じて陶器も磁器もお求めになられたら良いのではないかと思います。
次回は食卓風景を考えながら、どのような器が食卓に必要かご紹介したいと思います。
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