老いも若きも携帯を握り、メールや電話で簡単に要件を済ませるようになりました。手紙や葉書あるいは電報といったツールでしか要件を伝えられなかった時代から考えると夢のようです。悪筆に悩む事も少なくなくなりました。便利というツールを手に入れたのですから良かったというべきなのでしょう。そして当然ながら、手紙や葉書を書く機会は減ってしまいました。
私はと言えば、携帯やパソコンも使いますが、いまだにお礼状や季節のご挨拶は手書きで出すようにしています。それは文字を書く事をなるべく忘れたくないと思っているからです。実際に書いていて思う事は「漢字がスムーズに出てこない」と言うことです。変換などありませんから、いちいち辞書で調べなくてはなりません。ところで、手紙にもマナーがある事をご存知でしょうか。今回は手紙を書く時の基本的な決まりについて書きたいと思います。
手紙の形式について
1.手紙の構成
手紙は通常、冒頭の挨拶である「前文」、本来の用件である「主文」、最後に締め括る「末文」からなっています。前文には「頭語(拝啓、謹啓、前略など)」「時候の挨拶」「安否の挨拶」「お礼やお詫びの挨拶」を書きます。主文は「起こし言葉(さて、ところで、実は、など)」と「主文(本来の用件)」を書きます。末文は「結びの言葉」「結語(かしこ、敬具、草々など)」です。後付は「日付」「署名」「宛名」となり副文は「追って書き(追伸)」です。
2.手紙のルール
・「頭語」と「結語」は手紙の内容や格に合わせます。
・急ぎの場合や親しい間柄では「前略」として前文を省く場合もあります。
・締めくくりの言葉「かしこ」は女性だけが用います。
・日付は正式には年月日を書きますが、月日だけでも構いません。
・「追伸」は弔事の手紙にはつけません。
・封書の表書きは、和封筒では縦書き、洋封筒では横書きにします。形式的な手紙や目上の人には縦書きにします。表書きが横書きの時は裏書きも横書きにします。
・夫に代わって妻の言葉で礼状を書いた場合は、夫の姓名の左脇に小さく「内」と書きます。夫の礼状の代筆をした場合は「代」と書きます。
3.手紙のマナー
・冠婚葬祭のように儀礼的な用件は手紙で伝えるのが正式です。
・礼状は手紙や品物が届いてから3日以内に出しましょう。
・贈答に対する礼状は早く出す事を大切にしますので、時候の挨拶を省略する、目上の方に葉書で出すことも許されています。
・便箋にも「格」があります。正式には縦書きで罫線のない物です。しかし、改まった内容の手紙以外では縦書きや横書きの便箋、また色や柄付きの便箋を使っても良いでしょう。
・筆記具は毛筆、筆ペン、万年筆、水性ボールペン、油性ボールペンの順に「格」が高く、鉛筆は使いません。
・筆記具の色は黒、もしくは濃紺です。
・目上の人もしくは改まった手紙を出す場合、便箋は2枚以上、封筒は二重の白封筒を使います。内容が1枚に収まった場合は1枚付けて出します。
・お見舞いや不幸の際に出す手紙は、「重なる」ことを避けるため一重の白無地封筒を使い、便箋も1枚にします。
手紙にはご紹介させて頂いた通りに決まりやマナーがあります。目上の人や改まった内容の手紙には上記の内容を踏まえておくことが大切です。
綺麗な文字を書くためには、文房具店などで「見本付きの練習帳」なども売っています。昔、お習字の先生に上手くなる秘訣を伺いましたところ「とにかく、書く事です。」とおっしゃいました。丁寧に字を書く事は、心を落ち着かせます。
面倒だと思わず、たまには手紙を書いてみたらどうでしょう。きっと新しい発見があるはずです。身近な方には便箋を画用紙のようにして、絵を描く感覚で書いても良いのではないかしら。その方も楽しんで読んで下さるはずです。
私は季節ごとの便箋や封筒を沢山集めています。鳩居堂やはし本のものが多いのですが、旅先でその地にしかないような便箋や葉書を見つけると買わずにはいられません。ホテルに置いてあるレターセットや葉書にも素敵なものがあります。
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