「暑さ寒さも彼岸まで」と祖母はよく口にしておりましたが、それはやっと冬の寒さや夏の暑さからお彼岸の頃には解放されると言う事なのでしょう。
春のお彼岸と言えば、今月の17日から23日までの事を言います。
20日はその中日にあたり、「春分の日」として国民の休日になっています。この「春分」は「啓蟄」の次にあたる二十四節気のひとつです。春分の日は年によって21日になることもあります。そのような違いがあるのは、地球の運行状況が常に変化している為です。国立天文台がその日にちを発表しています。
「春分の日」は一年のうち昼夜の長さがほぼ同じになる日です。なぜなら、太陽が赤道上にあるので地球のどこにいても昼と夜の長さが同じになると言うわけです。「春分の日」とは宮中祭祀のひとつ「春季皇霊祭」(しゅんきこうれいさい)から改称されたものだそうです。この日は祝日ですが、その意味合いは「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」とされています。
ところで、この「彼岸」(ひがん)の意味は仏教において煩悩から解放された悟りの世界を意味します。
私たちが生きる煩悩に満ちた世界を此岸(しがん)と言います。春分の日には太陽が真東から出て真西に沈むので、此岸と彼岸が最も通じやすくなると考えられ、その日に先祖を供養すると極楽浄土に行けると考えられてきたようです。それが、お彼岸にお参りする習慣になったとされています。その日には、お墓掃除に行ったり、仏壇仏具の掃除をしたり、お供物をしてそれにあわせて日頃の自分自身の行いを振り返ったり見直すのが、古くからの習わしです。
我が家では仏壇がありませんので、写真立てを拭いたり、まわりを掃除したり、お花を飾り、故人の好きだった果物、甘味、お酒などを供えます。そして、母がしていたように経を読み感謝の気持ちを伝えます。
「春分の日」の食べ物と言えば、「牡丹餅・ぼたもち」が思い出されます。「ぼたもち」には小豆を使いますが、その赤い色が魔除けとされるのだそうです。このぼたもちにはこし餡を使います。お彼岸のお料理は「精進料理」と言われますが、もう母の代ではそれにこだわっていませんでした。実家は本家で、お彼岸には親戚が集まることが多かったものですから、お台所に立って一日中料理をしていた母を懐かしく思い出します。