禅僧に聞く:緑の中の建功寺

神奈川県にある禅寺建功寺です

ゴールデンウイークに禅寺「建功寺」を訪ねました。

2年ぶりに訪れた建功寺は、爽やかな緑に囲まれて、変わらぬ佇まいを見せていました。

枡野ご住職に久しぶりにお目にかかれる機会を得ました。お優しい眼差しや微笑みは変わられませんが、いくらかふっくらされて以前に増してお近づきやすい印象を持ちました。

私は枡野ご住職の著書「美しく、心地よく、生きる」(PHP出版)を以前から愛読し、心の拠り所にしています。どのページも分かりやすい言葉で書かれていて、是非皆様にお勧めしたい一冊です。

以前のブログで禅語「而今」(にこん)についてご紹介しました。(こちら) 私たちは普通「過去と現在と未来は繋がっている」と考えますが、禅において過去は過去、現在は現在、未来は未来と別々に存在すると考えるとあります。だからこそ、「前後際断」(ぜんごさいだん)、つまり切り離して、過去にこだわらず、未来を憂えず、この一瞬に集中して最善を尽くしなさい、と言う教えです。

ところで、「禅は行動」と言われます。

少しでも禅の学びを生かそうと、私は出来ることから日々の生活の中に取り入れてきました。例えば「早起きがいい一日を作る。」と、あります。せめて今より15分早く起きる事で心の余裕を持とう、というお勧めです。我が家で朝からTVをつけることはありません。起きたらまず窓を開け朝日を浴び、神仏にご挨拶をしてゆっくり朝食を頂き、支度を済ませて1日を始めます。このルーティンはすっかり定着しましたが、以前はTVをつけ、煽られるように時間との競争をする慌ただしい朝でした。TVをつけない事がこんなにも朝を変えるとは思っていませんでした。

最近、デパートやスーパーのレジでスタッフに大声で怒鳴って怒りをぶつけている人を見かけます。ちょっとしたことで怒りに火をつける人が以前よりも増えたように思います。人間社会は人と人で成り立っています。人には皆それぞれに感情や考えがあり、受け入れられない事も多々あります。しかし、自分の感情は自分でコントロールするしかありません。ご本に「自分の怒りを抑えるには考えない」と、あります。自分に向けられた行為や行動を身体で受け止めた後、頭にあげるなと言うのです。その方法として、怒りが湧いてきたら「丹田呼吸で心を整える。」と言う教えがあります。また、「波だった心を鎮めるために、体を動かすこともひとつ。」とご住職は書かれています。

「非思量」(ひしりょう)と言う言葉をご存知でしょうか?

簡単に言うと、「考えない」、頭を空っぽにする、と言う事です。あなたには、頭の中に勝手に湧いてくる不安などの負の感情に振り回される事はありませんか?私は眠れない時など、妄想や雑念が次から次に湧いてきて、負のスパイラルに落ちいる事があります。このようなことを考えないためには、頭を空っぽにするための訓練が必要だとあります。「考えない」習慣が身につくと、負の感情を放っておけるそうです。今、そのために実践している事ですが、子供の頃を思い出し、ポカンと空をしばらく眺めて心の空白を作るようにしています。

今の私たちは、インターネットの普及ですぐに容易に知恵やヒントが貰えます。そのせいでしょうか?皆スマホを覗き込んで情報をどんどん詰み、頭でっかちになっている様に思います。でも、情報を得る事が人間的な深みを増すわけではありません。単なる知識を増加させても人間としての深みを増す事では無いからです。本当に必要な情報は少ないのでは無いのでしょうか?ご本には単なる情報集めの弊害についても書かれています。

建功寺の参道です
建功寺の参道です

ご本からのお話はこれくらいにして枡野ご住職のお話の中で特に印象に残りました事を書きたいと思います。

それは「禅僧は物を見る視点が違う」とおっしゃった事です。

例えでお話し頂いたのですが、普通の人は新しい町に行くと、通りを歩きながらここに何があると言うように確認して行く。だが、禅僧は新しい町に行くとまず高い所に登り、全体を見下ろして町の様子を掴むと言われるのです。そしてつぶやくように「命を見ている」と付け加えられました。

これは物事を俯瞰でみると言うことなのだろうかと思いましたが、その先の「命」の言葉はドキッとして釘が刺さったようでした。普段、私はそこまで考えていないからです。

心身ともに磨かれたご住職は、私に軽く優しい言葉で「人間とは本来何か。」と教えられたのでしょう。ご住職は爽やかな五月の風のようだと思いました。


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