八十八夜は立春から数えて88日目の日の事を言います。
童歌にもあります。「夏も近づく八十八夜‥」と。子供の頃手遊びをしながら歌ったものです。初物のお茶を飲むと1年間無病息災で過ごせると言われていますが、八十八夜にはもう一つの意味があります。八十八夜に稲の種まきをすると、秋にはお米がたくさん取れると言うのです。八十八夜の頃は、茶摘みや種まきをすると良い時季だと言う事なのでしょう。この八十八夜は昔の人の知恵から生まれた言葉だと思います。八という数字は末広がりで縁起が良いと言われます。
今年の八十八夜は5月1日になります。
八十八夜の頃茶摘みが始まると言うのですが、これも所によって違います。と、申しますのも日本列島は縦に長いので、最初に鹿児島を3月下旬くらいに出発して茶摘みも北上するのです。この様子を「新茶前線」と言ったりします。実際の八十八夜の頃は、大体関西辺りにその前線が到達していると言われます。関東付近では5月下旬くらいになるそうです。八十八夜の頃は遅霜もなくなり、気候が安定します。また八十八は組み合わせると「米」と言う字になり、その意味でもさまざまな農作業の目安とされた事がわかります。
茶摘みと言うと子供の頃の思い出が蘇ります。以前に書いた事もありますが、我が家は山のふもとにあり、裏の畑のまわりには数本のお茶の木が植えてありました。この時季になると、祖母と母が姉さんかぶりで若々しい緑色の新芽を手摘みしていました。この茶葉をゴザの上に広げて乾燥させ、少ししおれたら手で転がすように揉みます。それを祖母が七輪の上に乗せた鉄鍋で炒っていました。茶葉を炒っている時は家の下の坂道まで良い香りが漂ってきて、小学生の私はワクワクした気持ちで足早に坂を駆け上がったものです。祖母が鉄鍋の中に手を入れて、茶葉を煎る時のシャッ、シャッと言う音と祖母の慣れたその手つきが面白くていつまでも側に座って見ていると、母から「宿題は済ませたの?」と声がかかり、渋々立ち上がったものです。出来上がった我が家の新茶はお店の物と随分違いましたが、お茶とはこのようなものだと思っていました。美味しいのかどうかもわからず、分かったような顔で飲んでいた子供の自分を思い出すと可笑しくなります。
さて、新茶はカテキンやカフェインが少なく、テアニンという旨味成分が多く含まれていると言われます。その為、リラックス効果も高いようです。旨味・渋味・苦味のバランスにも優れているので是非頂きたいものです。
新茶を購入したら、茶筒に入れ替えて保存します。茶筒がない場合は、最近のパッケージは気密性に優れているのでそのまま保存できます。ただし、香りの高い新茶は開封したら出来るだけ早めに2〜3週間で飲み切るようにしたいものです。
温かい新茶を淹れる場合、気をつけたい事は普通のお茶と違いデリケートですので、急須にお湯を注いだら短時間(45〜50秒)で蒸らす事です。
産地によっても若干の違いはありますが、基本的な新茶の淹れ方を紹介します。
新茶の淹れ方
① お急須に茶葉を入れる。(大さじで軽く2杯ほど)
② 熱湯を湯呑茶碗に八分目ほど注ぐ。湯冷まし(ゆざまし)がある場合は湯冷ましを使う。
③ 1分ほどお湯を冷ます。(80度くらい)
④ 冷ましたお湯をお急須に注ぎ、すぐ蓋をする。
⑤ 1分を切る時間で、湯呑茶碗につぎ分ける。最後まで、出し切る。
二煎目、三煎目を淹れる時は、湯冷ましなど他の器を使ってお湯の温度を80度まで下げます。急須にお湯を注いだら、すぐに湯呑茶碗につぎ分けます。
今年はぜひ新茶にトライしてみませんか?