お煎茶やお抹茶を中心としたカフェが生まれ、ブレンドして好みのお茶やスイーツ・デザートを楽しむ風潮が生まれたのはここ10年から15年といったところでしょうか。
お抹茶を完成させたのは利休居士(りきゅうこじ)ですが、以来その伝統はめんめんと受け継がれています。
お煎茶は平安時代の頃薬草として用いられ、これを煎茶道にまで発展させ楽しんでいたのは、江戸時代の頼山陽(らいさんよう)などの文人墨客だったと言います。
お抹茶の世界は、お茶の点て方や作法だけでなく全てのお道具に歴史があり、学べば学ぶ程その奥深さは素晴らしく、興味の尽きないものです。習い始めた20代の頃の私は、お稽古の日はお弁当持参で、終日先生のお宅で勉強させて頂いておりました。
しかし、私の家に茶室はなく、通常のお床のある日本建築の家に住まっていましたので、それに沿った礼儀作法も学びたいと思うようになりました。礼法や煎茶道を学ぼうと思ったのにはそう言う動機があったのです。
私が教えを乞うた当時の煎茶道の宗匠は、暮らしの中にこそお茶があると「暮らしの中のお茶」を提唱していらっしゃいました。
私はお煎茶の美味しい淹れ方や礼儀作法を習得し、和室のある暮らしに役立てよう、また、お抹茶の美味しい点て方を習得し、家族に楽しんでもらおうと思いました。
お抹茶のお茶事で使われる茶道具には歴史のある素晴らしいものが多く、器たちやお道具を見る目を養います。博物館に行っても予備知識があれば楽しみ方も違います。私は数十年前になりますが、イギリスを旅した際、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で日本の茶道具を一堂に集めたフロアを回りました。そこで、日本では見たことのない不思議な形の茶入れを見て、もっと造詣を深くしたいものだと思った事でした。
その様にお抹茶の世界の素晴らしさに感激する一方、お煎茶ではまさに暮らしに密着する煎茶・玉露・番茶の美味しい淹れ方や茶器やお盆と言ったお道具の扱い方、お食事の仕方、果ては仲人のやり方まで学んでいきました。私には両方とも価値のある習い事でした。
食事の後や一息入れる時のお煎茶やお番茶で美味しいお味のお茶を淹れられるのは、心をこめて淹れた回数かもしれません。
お抹茶も同じです。習いたての頃、「点て出し」(たてだし)の手伝いを先生に命じられ何十杯ものお茶を点てました。そのお陰で早くからコツを習得することが出来ました。
家では上生菓子や薯蕷饅頭がある時にはお抹茶(薄茶)を点てて頂きます。娘達には、お煎茶の淹れ方だけではなく、お薄を美味しく点てるちょっとしたコツやお菓子を菓子鉢から取る時の作法、懐子の使い方など教えています。お抹茶の世界も暮らしに溶け込んで、初めて活かされると思うからです。
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