我が家の本棚に使い過ぎてボロボロになった料理本が勤めを果たしたように並んでいます。ここ数十年開く事はありませんでしたが、先日懐かしくなり取り出してみました。
私は結婚が決まった時、慌ててお料理教室に通いました。その教室は生徒4人のこじんまりとしたものでした。3人は結婚が決まっていて皆同じようにお料理初心者でした。皆で先生の話を聞いて、材料を準備し、ベテランの生徒の動きを見ながら作って、レシピをノートに取りました。一年以上通い、かなりの数のお料理を習いましたが、その中で私のレシピとして後々まで残ったのは「鶏肉のピラフ」と「鱚(キス)のエスカベッシュ」の二品です。
実際にはテレビの料理番組や料理本で勉強しました。昔はホテルや有名シェフの料理番組が多く、欠かさず見ました。特に大阪帝国ホテルの村上料理長の洋食や四川料理の陳建民氏の中華料理は丁寧でとても参考になりました。料理本はNHKの「きょうの料理」を始め、「料理の基礎」、暮しの手帖社の「おそうざい十二ヶ月」「一皿の料理」、又「おかず全集」などを使いました。「一皿の料理」は帝国ホテルの料理長をつとめられた常原久彌氏の料理本で、一皿の中心になるお料理だけでなく取り合わせも書かれていてずいぶん参考にさせて頂きました。
昔は家族が揃う夕食をとても大切にしていましたので、和風、洋風、中華と日毎に献立を変えていました。
和風のお料理は、お出汁次第だと思い色々試しました。結局、お味噌汁は昆布と煮干しが一番お味噌に合うと思い、今でもお料理を始める30分から1時間前には水に5センチほどにカットした昆布と煮干しを入れて準備をしておきます。おすましは昆布と鰹節の一番出汁で作ります。シジミ汁は貝だけでなく、5センチ角の昆布を一枚入れます。それぞれの材料に合わせた出汁を使う事でおいしさが引き立ちます。煮物、煮魚もお出汁が美味しいと旨みが増します。
洋風のお料理は子供に人気でした。ところで、「一皿の料理」に「えびのクリームスープ」と言うのがあります。エビのカラに良い味があると言うのですが、その味を引き出す為にはとても手間がかかり、出来上がった時はくたくたでした。今のようにバーミックスのない時代でしたから全てが手作業で、4時間くらいかかりました。もう二度と作らないと思いましたが、家族は美味しい、美味しいと喜びました。
中華は色々作りました。味がまとまりやすいし、大皿や大鉢に盛るのでテーブルが賑わいます。初めの頃は手作り餃子も時間がかかりましたが、子供が手伝ってくれるようになり楽しく作った思い出があります。
人の出入りの多いウチでしたので、パーティ料理も色々作りました。お茶を教えていましたのでお茶事のための料理も作りました。
気がつくともう何十年もキッチンに立っています。昔、色々なお料理に挑戦したお陰でレシピを見ただけで味覚の想像が出来ます。冷蔵庫にあるものだけで美味しい料理を作ることも出来ます。でも、最近は長くキッチンに立っていると疲れます。体に無理のないように、美味しいポタージュを取り寄せたり、お出汁も簡易なものを使ったり致します。それでも一層美味しいと感じられるように味の調整ができるのは、自分の味覚を持てたからだと思います。
家族に喜んで貰いたくて、四苦八苦して作っていた頃を懐かしく思い出す今日この頃です。
ESPOER 〜希望〜をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。