三月、三寒四温の影響でしょうか、心も身体も落ち着きません。そんな時は、リラックスできる本を読んで、心をほぐすのも良いものです。
今回私がお薦めしたいと思っている本は、宮部みゆき著『蒲生邸事件』です。文庫本は上・下2冊になっています。
我が家ではよく本の回し読みをします。この本は長女から面白いと薦められた本です。これまでにも宮部みゆきさんの作品は、推理物を始めとして歴史物など楽しんできました。最近の私はどちらかと言うと、宮部みゆきさんの推理物より歴史物により興味を持っています。歴史物には人の心情、人情がとても豊かに描かれていて、私はその表現の旨さや構成の巧みさに感心して、何度も読み返してしまうのです。そのような作品の中で『蒲生邸事件』は推理物、歴史物と分けられない少し趣向の違う小説だと言っていいと思います。
ところで、推理小説だとやはり本場はイギリスでしょうか。ドラマや映画でお馴染みのアガサ・クリスティの「ポアロ」シリーズや「ミス・マープル」シリーズも本で読むと、ドラマや映画とは全く違う人物像や内容、場面設定であるものが多い事に驚きます。例えばドラマでは悲恋に終わる内容が、本ではハッピーエンドを予測させる内容で終わる、と言った具合です。
特に「ポアロ」シリーズの『ビッグ4』は本で読む事をお薦めします。この本は国家間をまたぐスケールの大きな作品で、大胆な仕掛けがあってとても面白いのです。実は私は、この作品はドラマにならないだろう、と思っていました。その訳は、この本をドラマ化するには余りにも多額の費用がかかるだろうと思えたからです。ですから、デビット・スーシェ主演での「ビッグ4」はどのような内容になるのか、とても楽しみでした。しかし、その内容は本とは余りにもかけ離れたものでした。
モーリス・ルブラン著の『リュパンの冒険』を始めとする「リュパン」シリーズも本で読むと、その面白さは格別です。比較的近年に書かれた推理小説にもワクワク、ゾクゾクする内容のご紹介したい本が沢山あります。さて、『蒲生邸事件』に戻りたいと思います。
読んで頂くのが一番ですので内容は割愛しますが、この小説の一つの大きなテーマは、「時間旅行ができる人間がいたとして、歴史は変えられるか」と言う問いだと思います。
時間は元々人間が決めたものです。そしてその流れを、私達は「歴史」と読んでいます。その歴史と言う時間を超えて自由に行き来出来る人間がいたとしたら、歴史の流れそのものを変える事は可能なのでしょうか。例えば戦争を起こそうとする人物を、他の次元に移動させてしまう事も出来ないわけではありません。現に今、ロシアがウクライナに侵攻し戦争が起きています。連日ネットやTVで見る戦地の様子に胸の痛くならない日はありません。何とかならないものかと考えてしまいます。
もう一つ『蒲生邸事件』に描かれているテーマは「時代を超えた心温まる愛の話」です。
これは、お読み頂いてこその感動だと思います。この胸の熱くなるような思いをしたいばかりに、私は何度も読み返しました。
数冊、私の好きな宮部みゆきさんの時代物の本をご紹介いたします。何度でもつい手に取ってみるのは『ぼんくら』『日暮らし』『おまえさん』と言う三部作です。その中でも特に私は『日暮らし』が好きです。短編としても一つ一つが傑作に思えます。日本人として忘れてしまった何かを思い出させてくれる作品でもあります。
ESPOIR 〜希望〜をもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。