小林研一郎さんのタクト

オーケストラの団員達です。

久しぶりにオーケストラを聴きに行きました。

6月21日の事です。場所は府中にある「府中の森芸術劇場」です。小林研一郎さんは現在、日本フィルハーモニー交響楽団の桂冠名誉指揮者でいらっしゃいます。

以前から娘達がストラヴィンスキーの「春の祭典」を小林研一郎さんの指揮で聴いたけど素晴らしくて、もう一度小林さんの指揮で聴きたいわね、と話すのを聞いていました。更にその日同時に、チャイコフスキー国際コンクールで優勝された神尾真由子さんのヴァイオリン演奏もあると言うので、手帳に印を付けて待ち遠しく思っていました。

まず神尾真由子さんのチャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 二長調 作品35のヴァイオリン演奏から始まりました。

ソロの場合、始めの一音でその人の持っている音色を想像する楽しさがあります。何と言うのでしょう。神尾さんの奏でる音色は深くて何かを語るようであり、その音を纏う(まとう)艶を感じます。さすがだと思いました。神尾さんは音色の美しさだけではなく鍛えられたテクニックがさらに素晴らしく、紡ぎ出されるメロディに何度も引き込まれました。この曲はロマン派のヴァイオリン協奏曲の中でも有名ですが、ロシア的な哀愁に満ちた旋律や技巧的な華やかさがあり、魅力的な作品だと言われます。サテン地の柔らかなオレンジ色のロングドレスに身を包んだ神尾さんは立ち姿も美しく印象的でした。

私の娘は子供の頃バレエを習っていました。毎年の発表会で「くるみ割り人形」の少女クララを踊った事があります。その影響で私は一時期チャイコフスキーばかり聴いていた時期がありました。その当時の事を私は思い出し、演奏の所々にチャイコフスキーらしいバレエ音楽的なファンタジー要素や物語を想像して心ゆくまで聴き惚れ、時に感極まりました。なお、小林研一郎さんのタクトはあくまでもヴァイオリンを引き立て、裏方に徹されているようでしたが、全体的なバランスは絶妙だと思いました。

休憩を挟んでベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」が始まりました。

実はこの演奏に入る前に小林研一郎さんから「英雄」の聴き方についてのレクチャーがありました。「英雄」は第1楽章から第4楽章まであるのですが、楽章ごとにキーになる和音があり、それを元に聴くとわかりやすいと言われるのです。この曲はベートーヴェンが苦境の時に書かれたもので小林さんはその頃のベートーヴェンを想像し、胸がいっぱいになると付け加えられました。

舞台からはみ出る程の楽器が並びました。

特にホルンなどの金管楽器が目を引きます。私は以前CDで「英雄」を聴いた事がありましたが、ベートーヴェンの他の作品に比べて何だか印象が薄いと思っていました。今回は小林さんのレクチャーに沿って聴いていきました。小林さんのタクトはとてもメリハリのあるものです。何度も繰り返される和音が旋律の意味を教え深めていきます。パンフレットに「英雄」とは民衆のために立ち上がったナポレオンの事を意味し献呈するつもりで書かれたが、その後ナポレオンは皇帝に即位し、ベートーヴェンを憤慨し失望させたとあります。

オーケストラは指揮者によって曲想が大きく変わります。私にとってベートーヴェンの「英雄」は分かりづらく、あまり好きな曲ではなかったのですが、小林さんのタクトが下りた時我を忘れて拍手をし続けていました。


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