このタイトル、何の話かと思われるでしょうね。
手はその人の生活スタイルを表している、とよく言われます。
働き者の手、細かな作業を得意とする指、その手の甲には年齢も刻まれています。しかし、昨今ではハンドクリームで満遍なく手入れをすればシワの少ない、年齢によってはシミ一つない綺麗な手を保つことだって出来ます。でもそれはじっとしている時の手です。私はその手の優美な使い方の話をしようと思うのです。
手の動きは、時としてその人の目力より何かを伝えるものだと思います。
無くて七癖と言いますが、電車の中で前の座席の方の無様(ぶざま)な手の動きに幻滅なさった事はありませんか。無様とは人目を憚らず、例えば鼻に指を突っ込む、耳をほじるなどで人を不快にするこのような手の動かし方の事です。主に、男性に多く見かける事ですが、女性でも「まあ」と呆れるような手の動きを見ることもあります。
私が習ったお煎茶の先生は、お急須やお茶碗を扱う時「博多人形の手を思い出して。」とよくおっしゃいました。
手首から指先までの形が不等辺三角形になるように、と。手首から手先までを段々細くなるようにするのです。例えば、お急須のつまみを押さえる時、左手の人差し指でつまみを押さえますが中指、薬指、小指は順次小さくなるように軽く曲げるのです。そうすると手の形が美しく見えます。そう言えば、日本舞踊でも手先を細く見せるような使い方をします。多くは親指を内側に曲げ全体をほっそり見せるのです。余談ですが、日本舞踊を長年なさっている方は身のこなしも何となくしなやかです。
お抹茶ではよく柄杓:ひしゃく(水指から水を組んだり、茶釜からお湯を汲んだりします)を扱いますが、無様にならないよう流れるように美しく扱うために修練を積みます。
日常生活に欠かせないお箸の扱いにしても、美しい箸使いの出来る人が、今の日本にどの位いらっしゃるのでしょうか。
これも大事な手の動きの一つです。TVの食事シーンなどを観ていますと平気でおかしなお箸の使い方をなさっている俳優さんを見かけ、その影響を考えて心配になります。公共の場とか公衆の面前でと言う意識は無くなってしまったのでしょうか。
毎日が慌ただしく、そんな事構ってられないとおっしゃる方もいるでしょう。でも、自宅ではなく、ちゃんとした席で食事に呼ばれた場合はどうでしょうか。恥をかくのはあなたです。つまり社会には様々な人がいて、きちんと躾の出来た人もいるのです。普段から気を付けていないと一度身についた習慣はなかなか直りません。でも身につけば、あなたのものだと言うのも確かな事です。
普通の事を普通に出来るのがマナーです。一度ご自分の手の動きをチェックなさってみたらどうでしょう。また、物を優しく扱うと優しい動きとなります。このように手の動きはその人の心の動きを反映するものだと思います。
日本はお箸の国です。お道具の一つでもあるお箸の美しい扱い方を、このブログでも紹介しています。(https://sutekianata.com/ohashi-1154.html)
美しい手であると共に、その手を動かした時に美しく見える手でありたいものです。
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