清明の春:日本の風物詩と旬の食材

心浮き立つ春の訪れです。

四月四日は日本の暦、二十四節気・春の5番目「清明」にあたります。

「清明」(せいめい)とは、万物が清らかで生き生きとした様子を表した「清浄明潔」(しょうじょうめいけつ)と言う言葉の略です。春のうららかな陽射しを受けて花が咲き、蝶が舞い、空は青く澄み渡り、爽やかな風が吹いている、そんな感じです。

花と言えば、桜、桃、菜の花、たんぽぽなどが思い浮かびます。そう言えば、私の子供の頃には、この時期田んぼには豆科の「れんげそう」が一面に広がり、田んぼをピンクに染めていました。しかし、年々歳々れんげ畑は減少して、昨今は見かける事が稀になりました。そのわけは稲の苗を植える時期が早まった事や農家が家畜を飼わなくなり、飼料としていたレンゲを栽培しなくなった事があげられるようです。あと、「カタクリの花」があげられます。亡き母は長年俳句を作っていて、この「カタクリの花」は初春を告げる季語だと話していました。

この頃の食べ物ですぐに思い浮かぶのは、筍(たけのこ)です。「筍掘り」に行った事はありますか?筍は地表に出る直前に掘ると、味が良いと言われます。取ったばかりのものであれば、お刺身のように生で頂けます。皮付きの筍は大きな鍋で水から茹でます。その際にヌカや鷹の爪を入れます。茹で冷ました筍を剥くと本当に過保護に育ったような瑞々しい筍さんが現れます。

この頃のフキも美味しいです。私は「フキのごま煮」をよく作ります。フキに塩を多めに振り、板ずりにして茹でて皮をむき、水につけアクを抜きます。食べやすい長さに切って、出汁に味を入れ、ゴマをたっぷり加えて煮ます。

この時期、「いちご狩り」なども楽しいですね。私は安い不揃いの「いちご」を買ってよくジャムを作りました。鍋に洗ったいちごといちごの重さの半量の砂糖を入れてしばらく置きます。砂糖が滲みて液がたまるようになったら鍋を火にかけます。ここで大切なのはアクをまめに取ることです。20分くらい煮ていちごに赤みが戻ったら出来上がりです。

カツオ」が旬を迎えるのもこの頃です。私は「カツオ」をカルパッチョにしてよく頂きます。カツオは独特の臭みもあるので、ドレッシングにニンニクを少々擦って入れます。春野菜も美味しいので種類多く彩りを考えながら加えます。

きっとこの季節の頃だったのでしょう。

私はその時、まだ10歳にもなっていなかったように思います。家の中は言葉を無くしたように静まり返っていました。薄暗い部屋の中から私は誘われるように陽の射す温かい縁側に出てきたのです。縁側に座ってぼんやり空を見上げました。空は優しい青に染まっていました。前の畑には緑の葉が青々と繁り、その葉の一枚一枚がキラキラ輝いていました。縁側に足をぶら下げて座り、後ろに手をつき空を見あげていると、トビが一羽ピーヒョロロ、ピーヒョロロと鳴きながら輪を描くように飛んでいました。私はトビを目で追いかけました。心地よい暖かさが全身を包み、眠気にのみ込まれるようでした。その時、耳慣れないメロディが聴こえてきたのです。その音色は物悲しく大人びていて子供心に忘れられませんでした。

このメロディは、バンドネオンと言う楽器で演奏されているアルゼンチンタンゴの名曲、とあとになって知りました。何でもない情景なのに、今まで何度でも思い出される忘れられない私の心の風景です。

このように何でもないのにいつまでも心に残る風景が、あなたにもありませんか?


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