よく「冠婚葬祭」という言葉が使われますが、その「冠」の意味をご存知でしょうか。
「冠」とはもともと貴族が元服の時に行った「加冠の儀」でかぶった冠(かんむり)の事です。しかし、次第に「通過儀礼」一般を指すようになりました。「通過儀礼」とは人の一生の中で行う節目の儀式の事です。つまり人が生まれ、成長し、やがて結婚し子供を産み育てるその中で、子供の成長を願い、無事に年を重ねる事を祝い、感謝すると言う事です。ですから「冠婚葬祭」と言う言葉は人生や生活の節目の重要な儀式をあらわす意味になります。
今に伝わる多くのしきたりは、平安時代以前に中国大陸からの伝来です。
このしきたりに影響を与えたのが中国古来の「陰陽道(おんみょうどう)」の考え方です。陰陽道とはこの世を全て「陰」と「陽」の要素が補完しあいながら成り立っていると言う考え方です。
茶道では亭主(もてなす人)が点前をする為に炉の前に座った時、客側を「陽」、亭主側は「陰」と考えます。その考え方は細部に渡り、手の重ねかたにまで至ります。右手は「陽」左手は「陰」となっているので、右手を上に重ねるよう致します。ただし、茶道と煎茶道の考え方は多少違います。煎茶道では男性が陽、女性が陰の考えを基にしますから、女性は左手を上に重ねるように致します。このように、「陰陽道」の考え方が茶道や煎茶道にも深く関わっています。
他にも「陰陽道」が元になっている考え方が沢山あります。祝い事の金額は奇数で包むのが一般的ですが、これも「陰」と「陽」の考え方からきています。雛祭りが三月三日、子供の日も五月五日と言うように奇数です。「七五三」も陽の奇数を尊んでの事です。つまり奇数は「陽」、偶数は「陰」としているからです。身近なものでは丸い鏡餅が二段なのは「陽」と「陰」でバランスをとると言う考え方からです。
皆が知っている通過儀礼について、順次ご紹介します。
1.帯祝い 命の誕生を喜ぶ儀式として「帯祝い」があります。多産でお産が軽い犬にあやかり妊娠5ヶ月目の戌の日に、「岩田帯」(さらしと言う木綿の布)と言われる腹帯を巻きます。家族が集まり安産を祈ります。これは土地柄によっても多少違うようです。私は義理の母方から紅白二反(たん)のさらしが岩田帯として届いた事を覚えています。
2. お七夜 赤ちゃんが生まれて7日目を「お七夜」と言います。この日に命名式行います。命名式には奉書紙を準備し、赤ちゃんの名前と生年月日を大きく書いて、神棚や床間など家の中でよく見える所に貼り、1ヶ月ほど飾ります。尚、文具店で「命名用紙」として売られてもいます。ただし、役所に出生届を出すのは誕生から二週間以内です。
3. お宮参り 赤ちゃんが土地の氏神様に「氏子」となった挨拶をするために神社に参拝し、その成長と幸せを祈る儀式です。一般的には生後1ヶ月ごろにおこないます。しかしながら、昨今は有名な神社に参拝することも多くなりました。
4. お食い初め 子供が一生食べ物に困らないように、と言う願いを込めて行われる儀式です。赤ちゃんのために新しく善、茶碗、箸などを買い揃え、赤飯、尾頭付きの鯛などの焼き物、煮物、なます、梅干しなどで一汁三菜にします。長寿の願いを込め、赤ちゃんと同性の年長者が食べる真似をさせます。
以上が赤ちゃん誕生の頃までの主なお祝いです。次回に成人までの「通過儀礼」を書きたいと思います。
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