この本が私の本箱に仲間入りしてから随分時が経っています。本の名前は『パリ左岸のピアノ工房』。著者はT.E.カーハート、村松 潔訳、新潮社からの出版です。
私は4〜5年前からピアノを始めました。今も続けています。練習時間は30分くらいです。始めた理由はクラシック音楽を聴く事やピアノを弾く事が脳の老化防止に役立つと長女に聞いたからです。長女には時々練習も見てもらっています。
最初は「ハノン」と「大人のためのピアノ練習」と言うクラシックの2冊から始めました。今は指の練習の為に弾いていた「ハノン」を卒業して「チェルニー30」を弾いています。練習曲と言ってもチェルニーの曲はどれも美しいメロディーですので、楽しんで続けられます。そしてもう1冊は「JAZZ」を弾いています。「大人のためのピアノ練習」は3冊目で飽きてしまいました。「ピアニストになるわけではないのだから弾きたい曲を弾けば良いのよ。楽しむ事が大切。」と投げやりになった時、長女に言われて、「JAZZ」を迷わず選びました。
最初に挑戦したジャズの曲はスタンダードナンバーの「煙が目に染みる」です。しかしながら小学校以来のピアノは難しいことばかりです。時間をかけて練習してもパーフェクトなどありません。あまりの不出来に残念感はありますが、いくらか曲として聴こえるようになったら、先生のOKを貰って先へ進みます。この様な調子で私は上手くありませんが、ピアノを弾く事が苦にはなりません。弾けなくてもピアノが好きだからだと思います。
CDでピアノ曲を良く聴きます。特に先だってお亡くなりになったマウリツィオ・ポリーニ演奏のショパンの「エチュード」は、ピアノを知り尽くした人の演奏だと感心し、いつも圧倒されています。正確で豊かな表現力で、あまりの凄さに涙が溢れることもあります。
作曲家としては、本来はチェンバロ演奏でしょうが、バッハの曲が好きです。もちろんショパン、モーツァルト、ドビュッシー、時代も全く異なりますが好きな曲をその時の気分で聴きます。
ご紹介する本はピアノを愛する人の必読書と言えるかも知れません。
なぜならよりピアノを好きになれる本だからです。この本は筆者が住んでいるパリの近所の狭い通りに「ウィンドにただ〈デフォルジュ・ピアノー工具と部品〉と書いてあるだけの小さな店がある。」と言うような書き出しで始まります。簡単に内容をご紹介すると、当時筆者はピアノを持っていなかったのですが、思い切ってこの店のドアを押します。「私は中古ピアノを探しているのだが。」と前置きして。ここで著者はピアノの神秘や不思議に出会い、段々にピアノに対しての理解を深めていくのです。子供の頃ピアノに触れた思い出、それからのピアノに対する憧憬を思い出すのです。ピアノはみんな違う、その人に合った音色がある。そして、とうとう筆者は自分に合ったピアノに出会うのです。
ピアノの話ですが、何だか人の出会いにも似ているように思います。
このようにパリの郊外にある小さな工房を中心に話は進んでいきます。この本を開いてみて下さい。ピアノの素晴らしさや楽しさをより深く理解できる事は請け合いです。ピアノの音を耳にした事がないと言う人はいないと思います。
ピアノは知っているけれど、本当はよく知らなかったと言うのが、最初読んだ時の私の感想でした。
先に書きましたように私のピアノは決して上手ではありませんが、何とかこれからも続けていけそうです。
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