欧州を意識して旅した時期があります。その中に、北欧の旅がありました。陶磁器の企画の仕事をしている時、業界の人達と有名な洋陶の窯元を巡りました。もちろん、観光も多少兼ねています。
オランダのデルフト陶器(デルフト焼き)の工場見学、デンマークのロイヤルコペンハーゲン、フィンランドのアラビア社の工場見学、そして最後にスウェーデンの名所を観るという内容です。
オランダは水の都、運河が街を縦横無尽に流れています。目指すデルフト陶器の工場はオランダの北と南にあり、運河に沿ったり離れたりして、バスで移動しました。
デルフト陶器(デルフト焼き)は、16世紀に伝わったイタリアのマヨルカ焼きの製法に、近世初期に東インド会社を通じて中国の磁器や日本の古伊万里にも影響を受けて作られたと言います。工場自体には余り記憶がないのですが、このデルフト焼きがヨーロッパの陶磁器を牽引したと言うガイドさんの話は、記憶に残りました。また、デルフトブルーと呼ばれる青色は美しく、タイル産業も盛んだと言う事で何枚かのタイルを購入しました。水車やチューリップの絵柄の物です。そうそう、あの有名な風車は、すでにほとんどが機械化されていると言う話でした。
私がオランダで驚いたのは、アムステルダムの運河沿いの一部の建築物があまりにハウステンボスの建物にそっくりだった事です。もちろんアムステルダム駅もハウステンボスの全日空ホテル(旧名)に外観がそっくりです。ハウステンボスがオランダをモデルに造られた事は有名な話ですので当たり前ですが、余りに似ていたので、日本にいるような錯覚さえ抱きました。
オランダは人種のるつぼと言われますが、考え方が柔軟と言うのでしょうか、日本とはモノの考え方が大きく違うようです。
バスの中でガイドさんが紹介してくれた話の中で印象に残っているのは、麻薬に対する考え方です。昔から麻薬はどの国でもその常習者は一向に減らず、その対処の仕方に苦慮しているようですが、オランダでは麻薬常用者を単に取り締まるのではなく、依存している人の為に、国で支援していると言うのです。患者の為のバスが巡回していて、中毒症状に合わせた注射などの処置をすると言うのです。その方が目に見えない所で麻薬患者が蔓延するより良い、と言う事らしいのです。
子育てにも大きな違いがあり、早いうち(小学生)から将来の職業を決めさせる、と言う事でした。大学生になっても将来の職業を決められない人がいると聞く日本とは大違いです。早くから道を決めてしまう事が必ずしも良いとは思いませんが、ちょっと驚きました。
また、窓辺の女として娼婦街が有名ですが、これも国が認めていて、娼婦達の組合もあると言うのです。実は夜、この娼婦街を歩いてみました。小説などで作中の舞台になったりもしますが、一言で言うと女性達にたくましい印象を受けました。日本の浄瑠璃の世界にある遊女の哀しさのようなものはほとんど感じさせません。「窓」と称されるガラス張りの中にいる女性は、下からのピンク色のライトを浴びて美しい肌をしていますが、媚びるような感じは全くありません。職業としてのプライドすら感じさせます。
世界に冠たる名を残し、歴史ある国オランダは、窯元巡りより、国自体に底知れない不思議さを感じさせました。今オランダを訪れたら、今度はどんな印象を受けるのでしょう。
次にデンマークに入国しました。デンマークでの話は次回に致しましょう。
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