フィンランドと言えば、オーロラが観られる、ムーミンの故郷、サンタクロースが住んでいる村がある国として有名ですが、昨今は暮らし方さえも注目されている国です。
しかし、20年以上前の私達の北欧の旅の目的は、洋陶の工場見学でした。江戸時代、東インド会社を通じて欧州に広がり様々な影響を与えた古伊万里。欧州のある国では、その古伊万里一つが兵士300人と交換されたとも聞きます。オランダでのデルフト焼きを始めデンマークでも確かにその足跡めいたものを感じました。フィンランドではどうなのでしょう。
私達が見学した工場は、アラビア社です。今では洋陶ショップのどこでも見られるパラティッシシリーズ(ブドウやパンジーが大胆にデザインされた食器)がまだ日本ではあまり見かけられない頃の事です。
まず、アラビア社の食器はこれまで訪れた欧州のどの国とも違い、どれも図柄や形状がシンプルでデザイン性に重点が置かれている事に驚きました。
マイセンやヘレンドなどヨーロッパの食器は形状においては優雅で曲線が美しく、色彩的には油絵を思わせるものが多くあります。それに比べるとアラビア社の食器の形状は直線的で、図柄は大胆にデザイン化され、その絵柄はハッキリとした色使いを施してあります。
陶磁器ひとつとっても国によって本当に特徴があるのですね。それにはその国独自の歴史や環境が大きく影響しているように思うのです。生活の中心が食卓にあることはどの国でも同じだと思います。テーブルの上に身近な植物や動物の図案化された明るい色彩の器が並べば、人は元気をもらえます。
北欧と言うと夏が短く、白夜があり、どちらかと言うと冬のイメージが脳裏に浮かびます。だからこそでしょうか。短い夏を楽しませてくれる豊かな森や美しい湖といった大自然の中でのアウトドアグッズにも、暮らしに身近な生活用品にも過酷な冬を忘れさせるような温かな色彩が多く見られます。
そう言えば、人々の様子にも追い立てられている感じがありません。そう感じたのは、工場までの道を迷ってしまい、満席のガーデンレストランに入り込んでしまった時の事です。そのレストランでは結婚披露宴の真っ最中でした。私達はフィンランドの人達に招かれていっとき祝いの宴に同席しました。外に出ると、小川のそばをアヒル達が悠然と行進していました。
その時の風の緩やかで温かった思い出は忘れられません。
ムーミンパパを始めとするムーミン一家の人形は、工場の中の雑然と棚に重ねられた器や花器などを見て歩いている時に、棚の横に一つずつ袋入りで掛けてありました。フィンランドと言う国を訪れてみて、ムーミン一家の物語が北欧に誕生した理由がわかるような気がしました。
私はのんびりしたい時、DVで小林聡美さん主演の「かもめ食堂」を観ることがあります。フィンランドを舞台にした内容で、フィンランドで撮影された映画です。その話の中にも森の話が出てきます。どこか自然に逆らわない生き方、ヒュッゲが感じられます。ご覧になっていない方は一度観て頂けたらと思います。余談ですが、この映画で使われている小林さんが使っている陶磁器のセンスが良くて素敵です。
私はムーミン夫妻を我が家の本棚に飾っています。私達は行く事ができませんでしたが、サンタクロースの村があるそうです。確かにフィンランドにはサンタクロースがいると思われる奥深い森があるのです。そしてムーミン一家が住んでいると思わせる森も広がっていました。
フィンランドは、人を自然に戻す力を持っている国だと思います。
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